映画レビュー「WELCOME TO OUZVILLE」
「ウズビルへようこそ」(WELCOME TO OUZVILLE, 2020, レバノン)
監督:Jay B. Jammal
ベイルートのスラム、Ouzai(オウザイ)で行われたアートプロジェクトを追ったドキュメンタリー『ウズビルへようこそ』が無料配信中!!
レバノンのひずみが集まるOuzaiで、アートの力で活性化を図る。レバノンならではの挑戦と葛藤が詰まった作品を、ご紹介します。
********
1975年~から1990年にかけて、複数の戦争を目にしたレバノン。
その間、住む場所を失ったレバノン人やパレスチナ人の避難民たちが、西ベイルートにある海辺の小さな地区、Ouzaiに集まりました。
戦争が終わると、政府はOuzaiから住民を追い出そうとしますが、両者の武力衝突に終わります。
そして、いつしか国から見放され、ギャングや暴力の溢れる無法地帯となっていきました。
*
Ouzaiに大きな衝撃を与えたのが、2016年のごみ危機。
ベイルートのごみの埋め立て地の機能が停止、回収がストップしたために、街中にごみがあふれ出し、「ごみの川」と言われるほどに。
当時の様子
(CNN "Lebanon trash problem not going away", Feb 25, 2016)
海辺のOuzaiには、海に溢れたごみが流れ着きました。これに我慢ならない、と声をあげたOuzai出身のアヤド・ナセル氏により、アートプロジェクトが始動。
*
国内外からアーティストを呼び寄せ、地域の子どもたちと一緒に街の壁をカラフルに塗り、グラフィティで埋め尽くします。
「Ouzai」と「Ville」(市、村など)を掛け合わせた、「Ouzville(ウズビル)」と名を改め、魅力的な地域へと変えようとするのですが・・・
********
彼は、「レバノンにある全ての色をOuzaiに詰め込んだんだ。政治的な旗を取り払って、レバノンの旗を入口につけた」と語ります。
ギャングや政治的・宗派的な対立による混沌が続くこの地域で、「レバノン」という一つの繋がりを頼りに地域を立て直すのは大きなチャレンジです。
コミュニティの外から人がやってくることに対する住民からの歓迎や抵抗、そしてアートが挑む限界も映し出されます。
レバノンの知らないところを見たい!レバノンならではのグラフィティが見たい!
そんな方におすすめの、最新ドキュメンタリー作品です。
映画のどこかに、日本のアニメ「グレンダイザー」を模したグラフィティも登場するので、探してみてください♪
Ouzvilleはここ!
0コメント