ホセインのラマダン入門
断食月(ラマダン)に何といっても欠かせないのが、豪華な食事!
いつだって美味しいレバノン料理ですが、ラマダンでは一体どんなご馳走に出会えるのでしょうか。
今回は、トリポリに住むシリア出身のホセイン、通称トリポリが誇る家庭アラブ料理のシェフ(!?)にインタビュー。ラマダンの食事の基本から、ラマダン月のシリアとレバノンについてまで、たっぷり紹介してもらいました。
おっと、ホセインはもうキッチンでフライドポテトの準備をしているようです、、、
料理の名前がたくさん登場しますが、それぞれアラビア語・英語表記をコピペして、画像検索で雰囲気もお楽しみください♪
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-まずは、ラマダンの基本から。
ラマダン月の間、日の出から日の入りまで断食「ソウム」をする。何も食べず、飲まず、たばこや水たばこもなし。これらは夜の間だけ許されるんだ。
この期間は、1日に2回食べる。まず朝の4時くらいの日の出前。でも朝食とは呼ばなくて、「スフール」と言う。そして日の入り後の「イフタール」。ラマダン月の食事は全て、朝食、昼食、夕食ではないんだ。
スフール/سحور
スフールでは、軽いものを食べる。なぜなら、朝から日没まで断食をした後、夜にたくさん食べるから。肉とか油とかをね。それですごい満腹になっているんだ。だから、朝には軽いものを食べる。例えば、
ラブネ(Labneh/لبنة): 発酵ヨーグルト
ジュブネ(Jibneh/جبنة): 白くて柔らかめのチーズ
ホムス(Hummus/حمص): ひよこ豆のペースト
ファッテ(Fatteh/فتة): ヨーグルト、ひよこ豆、オリーブオイルやナスなどを混ぜ、揚げたホブズを添えたもの
キュウリ(خيار)
トマト (بندورة)
ホブズ(خبز)(パン。薄いナンかピタのようなものが多い)も、ね。あとは、シリアで有名なんだけど、多分レバノンでは「ラマダンのホブズ」と呼ばれている、「マアルーク」というちょっと厚めのパンみたいなものもある。このパンは、イフタールでも食べるけど、ソフールでも時たま食べる。
薄いホブズはお花にもできちゃう!?
とにかく、スフールには軽いものを食べるんだ。
-結構たくさん食べてる気もするけど?笑
そうだね、どちらかと言えば軽い?という感じ。肉とかは食べないからね。
ちなみに、シリアでは朝食を「イフタール」と呼ぶ。レバノンでは方言の違いで「テルウィーア」だけどね。
けどラマダンの間は、パレスチナも、シリアも、イラクも、ヨルダンも、レバノンも、エジプトも、アラブのみんなにとって、食事は「スフール」と、「イフタール」の2つになるんだ。
イフタール/إفطار ، فطور
イフタールでは毎日、前菜(モカッビラート/مقبلات)として、
ムタッバル/ババガヌーシュ(Mutabbal/المتبل)/(Baba Ghanoush/بابا غنوج): 焼いたナスの身とタヒーネ(ごまペースト)、オリーブオイルやレモンなどを混ぜたペースト。コンロに直において焼くため煙が火事同然になることも
バタータ・ハッラ(Batata Harra/بطاطا حارة): “スパイシーポテト”と呼ばれるフライドポテト。パクチーやニンニク、チリパウダーなどで味付けされる
ファットゥーシュ(Fattoush/فتوش): キュウリやトマト、ラディッシュのサラダに上げたホブズを混ぜたもの。ザクロのドレッシングをかけることも
タッブーレ(Tabbouleh/تبولة): 細かく切ったイタリアンパセリ、トマトとブルグル(挽き割り小麦)のサラダ
を食べる。
あとはスープね、レンズ豆のスープ(شوربة عدس)。これはとてもお腹に良いんだ。15時間くらい何も食べていないから、最初にこれを食べる。コップにちょっとね。それで落ち着いてから、食事を始める。
レンズ豆のスープを作るホセイン
その後色々食べてから、やっとメインだ。これらは全部前菜だからね。
-もう十分食べてるよ!
ある日は魚、ある日はチキン。例えば、
カブセ(Kabsa/كبسة رز مع دجاج): 米に鶏肉を混ぜ、パクチーやクミンなどで味付けした大皿料理
サフランで色付けされたお米と
焼いた鶏肉を混ぜたら
ホセイン&家族作 カブセの出来上がり!
サヤディーエ(Sayadieh/صيادية): カブセの魚バージョン
ワラ・アイナブ(Wara Eynab/ورق عنب): 米や肉、野菜をブドウの葉に包んで蒸したもの
キッベ(Kibbeh/كبة): ブルグルと羊のひき肉などを混ぜて揚げたもの。味付けはオールスパイスやクミンなど
マハーシー(Mahashi/محاشي): 野菜をくり抜き、肉や野菜を詰めて炒めたもの。ズッキーニやナス、じゃがいもなどが使われる。スークではマハーシー用にくり抜かれたズッキーニに出会うことも
カワージ(Kawaj/كواج)
後はやっぱり、カワージ。これはアレッポの料理で、イフタールに食べる。
ナス、トマト、羊肉、じゃがいも、玉ねぎ、ナス、トマト、玉ねぎ、、、ってぐるぐる並べていくんだ。笑
ホセイン作カワージ
シェイフ・エル・マハシー(Sheikh el Mahshi/شيخ المحشي)
あとは、シェイフ・エル・マハシー。ズッキーニを切って、玉ねぎと羊肉と炒めて、調味料をたくさん入れる。米を炊いておいて、別にヨーグルトとニンニクのペーストとミントを混ぜる。次にお皿を用意して、米を少しのせる。そこにズッキーニと羊肉をちょっと加えて、で、ごはんちょっとをのせて、ズッキーニとナスと羊肉を少し入れて、ヨーグルトとニンニクを入れる。これで完成!簡単だよ。笑
-これらはシリアとレバノンとどっちの料理?それとも同じ?
カワージはシリアのアレッポの料理だけど、あとはだいたいどちらにもある。だけど、食べ物については、レバノンよりシリアの方が美味しいよ。笑
特に、アレッポの料理はね。自分がアレッポ出身だからってわけじゃなくて笑、とても有名なんだ。
ラマダンのジュース
ラマダン中は家族と住んでいる。ラマダンは家族と集まる期間だからね。仕事が終わったら、夕方にスークに行って、ジュースとかスイーツを買うんだ。ラマダンのジュースはおいしいよ。
ラマダンの時によくあるのは、
ベリージュース(عصير التوت)
ジャッラーブ(Jallab/جلاب): デーツやバラ水、キャロブなどから作られる。よく松の実が浮かべられている
リコリスジュース(عصير السوس)
レモンジュース(عصير ليمون) : 家で作るのはこれ!だそう。
ジャッラーブ
今年のラマダン
ラマダンの時期、最後の週にはスークが24時間開いているんだ。でも今年はコロナとかもあって、そうやってスークを開け続けていられない。制限が多いからね。
-経済状況も厳しい中で、どうやってみんなラマダンを過ごしているの?
今、正直に言うとレバノンの経済状況は全く良くない。全てのものが高くなった。
例えばファッルージ(チキンの丸焼き)は、以前12,000リラだったのが、今では42,000リラだ。これじゃあみんなベジタリアンになるよね。笑 けれどやっぱり毎日食べたいからなれないけど。
前菜や料理をたくさん挙げたけれど、今年のラマダンはみんながこういうリストを作れるわけじゃない。スープとじゃがいもだけかもしれないし、とても値段が上がっているから、肉はないかもしれない。
全員ではないけれど、安定した状況の人はいるよ。国外に親戚がいる場合、米ドルを国外から送ってくれるからね。けれどレバノン人もみんながそうではない。シリア人も、親戚が難民や移民として国外にいることがあるから、ヨーロッパにね。全員ではないけれど、同じような場合もある。けれど両者にとって状況は良くないよ。ほら、政府もちゃんとしていないし、問題ばっかり。どうなるかわからない。
けれど、コロナは前よりは良くなったかな。まだ危ないけれど、トリポリでは以前より件数も減って良い雰囲気だよ。
レバノンとシリアラマダンの違い
シリアはレバノンと少し違うかな。地域によるけど、例えば、ラマダンの雰囲気が良い地域もあるけど、アレッポやイドリブでは、ラマダンはレバノンとは違う。なぜなら、人々は貧しいから。人口の8割が貧しいんだ。もちろん幸せではない。だって家族はレバノンにいたり、トルコやヨーロッパにいたりとばらばらで、誰かが亡くなっていたりもするからね。だから、そういう意味でレバノンはシリアより良い。いろんな必要な物がシリアにはないから。レバノンではそうではない、少し高いけどね。
シリアの慣習
内戦の前は、ラマダンの雰囲気はレバノンより良かったと思う。雰囲気は違う。慣習があるんだ。近所の人がそれぞれ違う料理を作って、それを分け合って、たくさんの種類を食べられるようになる。笑
古くからのシリアでの慣習だ。地域による習慣もあった。けれど、少しずつ今は変わってきている。これは内戦前の話だからね。けれど、レバノンでも今はこんな感じだよ。近所の人や、家族の家と、それぞれ持ちよるんだ。
先週も、家族は、自分が毎日食事にスープが欲しいって知っていて、けれど誰も作る時間がなかったんだ。そこで近所で、「ホセインにスープをください」って言いに行ったんだ。そうしたら、けっこう大きい入れ物でスープをくれた。笑 こういう慣習はすてきだよね。
あとは、「アッラーフアクバル(神は偉大)」ってシャイフが言うのを聞いたら、イフタールの合図で、食べ始めなきゃいけない。その時、もし道を歩いている人がいて、それに気づいていなかったら、その人を招いて一緒に食べるんだ。
レバノンでも、毎日家族とではなくて、友人とかと一緒に食べることもある。みんなで持ち寄ってね。
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今年は困難の多いレバノンでのラマダン。それでも、家族やご近所さんと集まり、美味しい料理を囲む、そんな心地よいラマダンが多くの人に訪れることを願って。
ラマダン カリーム!
〈協力・写真提供〉
Hussein Freij インタビュー実施日:2021年5月1日
(文・Beit Lebanon)
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